
最高の官能と興奮
バイクという乗り物が大好きです。もちろん、スクーターも風を切って気持ちいいですが、ここで言っているバイクは、シートにまたがり、タンクを両ももでしっかりとホールドし、両足の間にエンジンがうなってる方のバイクです。
スクーターは、ちょっと出かけたりとか雨の時には足が濡れにくくていいな、という感じの便利な乗り物ですが、わたしはちょっと危険でかっこいいバイクが大好きです。
バイクは不便な乗り物です。荷物は載らないし、体はむき出しですし、音楽聴きながら乗るのも困難です。もちろんエアコンもありませんし、寒いときの暖房もありません。でも、その不便でも不要なモノをすべてそぎ落として、ライダーと一体になって、ライダーを楽しませるためだけに存在している、その有り様に惹かれるのかもしれません。
アクセルをひねれば、あっという間に異次元の世界へと誘ってくれ、現実世界から自分を引き離してくれます。そして、まるで空を飛んでいるかのようにひらりひらりとライダーの意志に従って突き進んでいくのです。
もちろん、ときどき恐ろしい思いもします。しかし、それはたいていライダーの未熟さの故です。
全神経を集中し、五感、いや六感までをも研ぎ澄まして周囲に気を配り、愛車をコントロールしていかなければならないのです。それは、まるで真剣を用いて最大のライバルと対峙しているかのようでもあります。ごくわずかな不注意が自分自身の命取りとなるのです。
これは、危険なライディングをお勧めしているわけではありません。
バイクという乗り物は、常に自分のレベルに合わせて、いつもそのような楽しみを与えてくれるのです。ですから、決して無理することがなくとも、バイクと対話しながら、その人なりのスリルを味わうことができるのです。
あるレーサーは、かつてこのように語りました。「バイクに乗れれば、SEXはいらない」そのレーサーはバイクからそこまで言わせるまでの、官能と興奮を得ていたのでしょう。
快適ではなく、便利でもなく、ただ人を運んでくれるだけの乗り物ですがバイクは最高の乗り物なのです。